市が監査請求結果 旧検疫所「決定できず」合議整わず、異例の形

update 2007/12/22 11:15

 函館市監査委員は21日、旧函館検疫所台町措置場の建物賃貸借契約と、介護付き有料老人ホーム建設をめぐる2件の住民監査請求の監査結果を出した。検疫所については「監査委員の合議が整わず、監査結果を決定できない」という異例な形となり、福祉施設問題については「理由がない」として棄却した。市監査事務局によると、市の監査請求に対し合議に至らなかったのは、監査が始まった1955年以降初めて。

 旧検疫所の問題は、市が公募で選定した札幌市のNPO法人(特定非営利活動法人)との賃貸借契約を、開業が当初予定より遅れているなどの理由で2006年9月に解除。その直後に同法人の理事を務め、運営に関与していた埼玉県内の会社役員の男性と随意契約を結んだ。これらの経緯が男性への便宜供与に当たり違法性があると、道南市民オンブズマンの大河内憲司代表ら9人が監査請求した。

 監査委員は審議を重ねたが意見が分かれ、最終的に一致しなかった。地方自治法では監査、勧告の決定は「監査委員の合議によるもの」とあり、この合議は「最終的に全員の意見の一致が必要」と解釈されている。

 監査結果には、参考意見として「新たな契約者となる資格を欠くとまでは言えず、市としての損害発生の恐れもない」「男性の資金提供の約束不履行が当初契約の解除につながった。公序良俗に反し、新たな契約者となる資格がない」などとする双方の見解を添えた。

 大河内憲司代表は「住民側に再び問題を投げ返したという意外な結果。監査委員の機能を果たしていないのではないか」と話し、住民訴訟の準備を進めるとしている。

 福祉施設建設をめぐる問題で監査請求をしたのは、市内在住の不動産業の男性(55)。問題となった介護付き有料老人ホーム建設を計画していた会社の役員を務めた。市が不当に有料老人ホームの建設を妨害したため、施設整備により得られる固定資産税などの収入が入らなくなり市に損害を与えたとし、責任者だった西尾正範助役(当時)に支払われた退職金の一部1000万円の返還などを求めた。

 監査委員は、施設建設の妨害があったかなど、市の行政手続きに関する内容は「財務会計上の行為に該当せず、措置を請求できる対象ではない」と一括して退けた。西尾助役への退職金支給は法令に基づいた行為で、固定資産税収入は、施設がないため損害の発生原因がなく、損害が生じたと判断できないとした。

 男性は「訴訟を検討することも考えている」と話している。

提供 - 函館新聞社



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