全校柔道で思いやりの精神を…乙部中で男女とも必修
update 2007/12/19 09:26
【乙部】乙部町の乙部中学校(豊田收校長、生徒122人)は2004年4月の開校以来、道南圏では例をみない全生徒参加の「校内柔道大会」を開いている。深刻ないじめや校内暴力が社会問題化する中、男女を問わずすべての生徒が心身の痛みを共有しながら、互いを思いやる精神を養ってもらうおうというのが目的だ。文部科学省は新年度、学習指導要領の改正に伴い、中学校での柔剣道などの必修化を進める方針で、武道を通じた心身の教育が脚光を浴び始める中、同校の取り組みはさらに注目されそうだ。
鋭い視線の2人の男子生徒がじりじりと間合いを詰める。互いの袖や襟に指が触れた瞬間、全身でぶつかり合いながら技を繰り出す。「一本!」。真新しい体育館に審判員の鋭い声が響く。惜しくも敗退した生徒は会場の片隅で悔し涙を流しているが、勝ち誇る生徒の姿は無く、静かに互いの健闘をたたえ合う。
4日に行われた大会は、100人を超える保護者や地域住民が見守る中、生徒たちの熱戦が繰り広げられた。
試合は学年を問わない男女別で行い、体重や技量に応じて、男子は5つ、女子は4つのブロック戦を争う。午前9時からの試合数は約280試合に上り、少子化が進む桧山管内では最大規模の柔道大会にもなっている。審判員には阿部一町議会議長をはじめ、町内の柔道有段者が数多く参加する。
同校では男女を問わず、1年生から体育の授業で柔道を学ぶ。柔道部は無いが、技量を磨いた生徒が中体連で好成績を納める成果も。豊田校長は「大半の1年生は柔道が初めて。大会までの授業は20時間ほど。大会を目標に練習を重ね全員が相当のレベルに達する」と説明する。
同校は2004年4月、旧乙部、姫川、富岡、栄浜、明和の5中学校の統合で誕生。町役場がある市街地をはじめ、農漁村など多様な地域の子供たちが同じ中学校に通うことになり、統合後の融和や団結心をどう盛り上げていくかが課題だった。そこで導入されたのが、柔道を通じた“心身の教育”だ。
豊田校長は「激しいけんかをすること無く育った子供たちは、お互いの限界を知らず、極端な暴力や陰湿ないじめに発展してしまう。ルールにのっとった柔道を通じて、心身の痛みや思いやりの心を養って欲しい」と語る。
武道を通じた教育という全国的な動きを先取りした形の取り組みで、町の阿部喜美夫教育長も「走ることや球技が苦手だった子供たちが柔道大会ではヒーローになる。お互いの優れた部分を知ることで尊敬し合う心も養われる」と評価。町教委としても従前通り、全面的にバックアップしていくことにしている。
提供 - 函館新聞社
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