洞爺丸沈没からの生還体験を一冊に

update 2012/12/26 10:01


 台風15号による暴風で青函連絡船「洞爺丸」が沈没した1954(昭和29)年9月26日、同船にコックとして乗船していた函館市湯浜町の秋保栄さん(79)が、九死に一生を得た体験を本「洞爺丸 生還した料理人」にまとめた。秋保さんは「生存者として被災体験を語ることは私の使命。絶対に風化させない」と力強く語る。

 洞爺丸は、台風15号により貨物船4隻とともに七重浜沖に沈没、1100人超が犠牲となった。秋保さんは、昨春まで調理師講師として訪れていた函館大妻高校の故外山茂樹前校長、池田延己校長から執筆依頼を受けていた。

 中学卒業後、船乗りを夢見て故郷の山形県戸沢村を飛び出した秋保さん。前半は、食べることで精いっぱいだった少年期に加え、洞爺丸の姉妹船「大雪丸」や景福ホテルで調理師見習いに励んでいた駆け出しの時代を紹介している。

 沈没当夜についての中盤は、交代要員として洞爺丸に乗り込んだ場面から始まる。出航から間もなく、船は台風に揺られ右舷に大きく傾斜。海中に滑り落ちていく乗客を眼前に、左舷の固定テーブルにしがみついて難を逃れる秋保さんの必死さが伝わってくる。

 脱出後、岸に流され、付近住民の介抱を受けた秋保さん。一命を取り留めたことを「幸運な偶然が重なった」と何度も強調。その後の料理人一筋の人生を「人々との出会いが支えてくれた」と振り返っている。

 本を手に、秋保さんは「100人以上の乗客が目の前で死んでいくのをこの目で見た。自然の力をばかにしてはならない。事故を知らない若い世代に読んでほしい」と話している。

 B6判、全85ページ、一冊952円(税別)。問い合わせはものかき工房。

提供 - 函館新聞社


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