巨大地震 南西沖の悪夢再び

update 2011/3/12 10:07


 【上ノ国、江差】11日に東日本を襲った巨大地震で、過去に何度も大津波に襲われた桧山沿岸では、津波警報の発令とともに緊張感が頂点に達した。テレビが伝える東北地方の被災状況に多くの住民が息をのみ、津波災害の悪夢がありありとよみがえった。

 地震発生の瞬間、上ノ国町役場では、全身を振り回されるような揺れに見舞われ、庁舎はギシギシときしんだ。大勢の職員が周囲に詰め掛けたテレビの画面は、被災地の様子を刻々と伝えた。工藤昇町長は「悪夢を見ているようだ…」と息をのんだ。上ノ国とよく似た港町が濁流に消えていく。画面には、取り残された住民の姿も。ベテラン職員が「早く逃げろ!」と声を荒げた。過去の大津波の忌まわしい記憶がよみがえり、海沿いのマチは緊張感に包まれた。

 北海道南西沖地震が発生した1993年7月12日夜―。上ノ国からは、奥尻島の青苗地区を焼き尽くす炎が間近に見えた。夜が明けると、クジラのような島のあちこちから黒煙が噴き上げていた。「津波が怖くて毛布をかぶり高台で一夜を過ごした。炎の下に多くの住民が取り残されていると思うと胸が詰まった。島は間近に見えるのにどうすることもできなかった。そして今回も…」。無念さを思い起こした住民は「1人でも多く助かってほしい」と祈った。

 情報収集に追われた江差署でも、署員がテレビにくぎ付けに。函館市のともえ大橋で交通規制に当たるパトカーが大写しに。警察無線から「海水が押し寄せてくる」と悲痛な叫びが響いた。赤色灯を回したパトカーが、沿岸監視のため慌ただしく出動した。

 南西沖地震でも、多くの漁船や車が津波に飲まれた江差漁港。津波警報の発令とともに、多くの漁船が沖合に避難した。高台にある町文化会館には、青ざめた表情の住民が自主避難してきた。「日本海中部地震では、海の水がサーッと引いていった」。当時を知る町職員は表情をこわばらせながら海面を見据えた。

提供 - 函館新聞社


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