戸惑う量刑判断…裁判員制度 「被害者参加」の模擬裁判
裁判員裁判制度を想定した模擬裁判が17、18の両日、函館地裁で開かれた。12月から導入される「被害者参加制度」も取り入れ、検察側の座席に遺族役が座るなど、より本番に近い内容で進められた。実際に一般市民から選ばれた裁判員6人を交え、裁判員の選任手続きから審理、評議、判決までの日程をほぼ予定通りにこなした。ただ、市民感覚が量刑判断にどのような影響を与えるかは未知数で、双方に試行錯誤がうかがえた。
事件は泥酔状態で自動車を運転中、対向車と正面衝突事故を起こし、相手の男性を死亡させて、危険運転致死罪に問われた男を想定。犯罪事実に争いはなく、被告の反省の度合いや遺族の処罰感情などを踏まえ、量刑面のみが争点となった。検察側は懲役10年を求刑し、裁判員6人と裁判官3人で評議し「懲役8年」の実刑判決となった。
被害者参加制度では、検察側の席に座った犯罪被害者の関係者が裁判長の許可を得た上で、直接被告に質問したり、意見陳述で量刑にかかわる発言をすることができる。今回の模擬裁判では検察の論告求刑の後、被害者の妻役が夫の無念さを代弁し「法律の詳しいことは分からないが一番重い刑になってほしい」と厳しい処罰感情を伝えた。
検察、弁護側双方ともに法律や裁判独特の専門用語には解説を加えるなど、裁判員の存在を意識しながら審理を展開。検察側は証拠調べで遺族の証言を最後に示して裁判員の感情に訴え、弁護側は「疑わしきは被告人の利益に」などと刑事裁判の原則を説いた。
裁判員を務めた男性会社員(54)は「公判中は懲役20年くらいでも…と思ったが、懲役8年は妥当なところに落ち着いたのでは」とし、別の男性会社員(37)は「被告にとっての1年間という時間を軽々しく扱えない」と述べ、量刑判断の難しさを感じたとした。
柴山智裁判長は「裁判員は被害者の立場を重視していると感じた。裁判員の感覚を大切にするべきで、従来の判決内容と変わるのは当然のこと。裁判員に判決を下す重みを感じてもらえたのは良かった」と話す。裁判員を務めた6人はある程度、制度に関心を持っていた上、公判の進行に抵抗感はなかったと口をそろえた。裁判の公平性を維持しつつ、一般市民の目線や感覚がどのくらい判決を左右するのか―。同制度は来年5月21日に始まる。
提供 - 函館新聞社
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